ラグジュアリーブランドとPRについてのお話

今回はヨーロッパのラグジュアリーブランドのPRについて、お話したいと思います。
私が過去に勤めていた会社は、4社とも、大抵の方がご存知のハイブランドでしたが、どのブランドにも、明確なフィロソフィーが存在し、そして、PRのあり方も独特なものでした。
それでは、まず質問です。
皆さんがラグジュアリーブランドと聞いて、まず最初に思い浮かべるのは、どのブランドでしょうか?多分、シャネル、エルメス 、ルイ・ヴィトンあたりだと思います。
では、ブランドのロゴマークは知っていますか?勿論、目にしたことがあるでしょう。
シャネルは2つのCが、左右対称にクロスしています。エルメス はHermesの文字と馬車のイラスト。ルイヴィトンはLとVを組み合わせたロゴタイプ。
そのブランドカラーは何色でしょうか?シャネルならブラック。エルメス はオレンジ。ルイ・ヴィトンならブラウンですよね。
其々、どんな商品を思い浮かべますか?シャネルなら、ブラックの化粧品のパッケージやチェーンストラップ付きキルティングバッグ。エルメス は、バーキン、ケリーなどのバッグ類や美しいプリントのカレ(スカーフ)、ルイ・ヴィトンは、堅牢な旅行鞄などを思い浮かべると思います。
その名前を聞いた時、ロゴを目にした時、殆どの人が、一貫したイメージを想起できるのは、何故なのでしょうか?
例としてあげた、この3つのブランドは、19世紀半ばから20世紀初頭に創立されています。そして、現代に至るまで、創業者の理念、世界観という、ブランドの普遍的な価値を、保持し続けているからなのです。
勿論、守るだけでは、やがて飽きられ、輝きを失っていきます。ブランドといえども企業ですから、時代への適応力を磨き、モノを売る必要があります。
その時代の先端にいる、アーティストやデザイナー、セレブリティとのコラボレーション。ユニークで革新的な商品やイベントなど、次々と仕掛けていますね。けれども、決してブレることはありません。
少々、前置きが長くなってしまったので、話しを戻します。
ブランドのPRを一言で要約すると、そのブランドの企業DNAや世界観を語る「語りべ」のようなものなのです。ジャーナリストとの会話で、プレスリリースの文章で、あらゆる場面で、繰り返し繰り返しそれを語り、なるべく多くのメディアを通して、一般消費者の皆さんへ、ブランドの価値を認知していただくこと、そして、ブランドに対するロイヤルティ(信頼や愛着)をより高めることだと思っています。単にモノを売るためのPRではないのです。
何故ならば、それがブランドのブランドたる所以であり、顧客に提供できる、唯一無二の価値だからです。
PRとして、情報を広くお伝えするために、多くのパブリシティを獲得することは重要です。けれども、その媒体のクオリティやイメージ、もしくは企画内容などが、自社ブランドに相応しくないと判断すれば、ご依頼をお断りすることも、多々、あるのです。そのため、ブランドのPRは生意気だと、メディアから陰口を叩かれることも、少なくありません(笑)
全ては、顧客の信頼を裏切らないためなのです。
いつかシャネルのツイードのジャケットを着てみたい、バーキンのバッグを持ってみたい、ルイ・ヴィトンのスーツケースで、世界各国を旅行してみたい…。どんなに高額であっても、投資する価値があると判断されるからこそ、今もなお、顧客から選ばれ続けているのです。
そういう意味において、PRは重要な役割を担っています。誰よりも深くブランドの価値を理解し、ロイヤルティを持たないことには務まりません。何をするにしても、その根底には、ブランドのDNAが息づいていなければ、ブランドとはいえないからです。