猫は神秘的な生き物だと言われます。猫と暮らしていると、度々、そう感じることがあります。
昨年末、母が他界したのですが、それ以来、愛猫が不思議な素ぶりを見せるようになりました。母が生前に使っていた部屋の壁の一点をじっと見つめたり、時には鳴くこともあります。その度に「誰が来てるの?ママかな?パパかな?」と冗談まじりで猫に問いかけています。科学的には「音や匂い、空気の揺らぎに敏感だから」という説明になるのでしょうが、私にはそれ以上のものに感じられるのです。
14年前に父を亡くして以来、毎朝、お仏壇にお線香をあげて手を合わせることが日課となっているのですが、そんな時、必ず駆け寄ってきてスリスリしてくるのです。両親を偲ぶ大切な時間にそっと寄り添ってくれているかのようです。もしかしたら、一緒にお祈りしているつもりなのかも…とさえ思います。大切な家族を失った悲しみを感じ取り、側に寄り添うことで表現しているとしか思えないのです。話は少し逸れてしまいますが、愛犬の場合は表現の仕方が違います。私がお仏壇の前でぼんやりしていたりすると、側に寄ってきて、私の顔を覗き込んできます。「大丈夫?」と言っているかのようです。明らかに私の表情や仕草から何かを読み取っています。「ありがとう、大丈夫よ」と言うと、嬉しそうな顔をします。猫と犬、表現の仕方に違いはありますが、大切な人を失った悲しみと喪失感を和らげてくれる、心強い存在です。
来月には母の一周忌を迎えます。最近では、不思議な素ぶりを見せることは少なくなりました。元々私にべったりの甘えん坊です。寝ている時以外は後追いをしますし、お風呂やトイレの出待ちは当たり前。所謂、ストーカー猫なのですが、より一層、甘えん坊になってきたような気がしています。母と愛猫は2年間、家族として一緒に暮らしたことになります。短いようですが、母の声、匂い、生活のリズムをちゃんと覚えていて、猫なりに寂しさや不安を感じていたのだと思いますが、時間の経過と共に、日常を取り戻しているようです。
動物には人間の表情や仕草、声のトーンから心の状態を読み取る力があることは確かだと思いますが、猫にはそれ以上の何か…人間には見えない何かと繋がっているのだと思えてならないのです